PECVD(プラズマ・エンハンスト・ケミカル・ベーパー・デポジション)の前駆体ガスは、一般的に反応性ガスで、プラズマの作用でイオン化して励起状態の活性基を形成する。その後、これらの基が基板表面に拡散し、化学反応を起こして膜成長が完了する。一般的な前駆体ガスには、金属、酸化物、窒化物、ポリマーなどの基材上に薄膜コーティングを形成できるシラン、酸素、その他のガスが含まれる。
詳しい説明
-
PECVDにおける前駆体ガスの役割:
-
PECVDでは、前駆体ガスは気体の状態で反応室に導入される。高周波(RF)、直流(DC)、またはマイクロ波放電によって生成されたプラズマが、これらのガスにエネルギーを与える。このイオン化プロセスにより、イオン、自由電子、フリーラジカル、励起原子、分子を含むプラズマが形成される。これらのエネルギー種は、基板と相互作用して薄膜を成膜するため、成膜プロセスにとって極めて重要である。
- 前駆体ガスの種類シラン(SiH4):
- 二酸化ケイ素や窒化ケイ素などのシリコン系薄膜の成膜によく使われる。酸素(O2):
- 酸化物を形成するために他のガスと組み合わせて使用されることが多い。水素 (H2):
- 低温での前駆体種の還元または分解を補助するために使用される。有機ガス:
-
ポリマー膜の成膜には、フルオロカーボン、炭化水素、シリコーンなどのガスが使用される。フィルム形成のメカニズム:
-
プラズマは反応種の化学活性を高めるため、従来のCVDに比べてはるかに低い温度で化学反応を進行させることができる。プラズマによって前駆体ガスが解離し、反応性の高い化学種が生成され、基材や化学種同士が反応して目的の膜が形成される。このプロセスは低温でも効率的であり、高熱に弱い基板には非常に重要である。
-
PECVDにおける低圧の重要性:
- ほとんどのPECVDプロセスは、プラズマ種の平均自由行程を長くして放電プラズマを安定させるため、低圧で行われる。この低圧環境により、反応種が基材表面に効果的に到達し、蒸着膜の均一性と品質が向上する。
- PECVD技術のバリエーションRF-PECVD:
高周波プラズマを使用し、容量結合(CCP)または誘導結合(ICP)によって発生させることができる。誘導カップリングは通常、より高密度のプラズマを発生させ、前駆体をより効率的に解離させる。
VHF-PECVD: