直流(DC)スパッタリングは、薄膜の成膜に用いられる基本的な物理蒸着(PVD)技術である。このプロセスでは、基板(陽極)とターゲット材料(陰極)の間に一定の直流電圧が印加される。主なメカニズムは、ターゲット材料に電離ガス(通常はアルゴン(Ar)イオン)を衝突させ、ターゲットから原子を放出させることである。放出された原子は真空チャンバー内を移動し、基板上に堆積して薄膜を形成する。
詳細説明
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電圧印加とイオン化:
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DCスパッタリングでは、通常2~5kVのDC電圧が真空チャンバー内のターゲットと基板の間に印加される。チャンバーは最初、3~9 mTorrの圧力まで排気される。次にアルゴンガスが導入され、印加電圧の影響下でアルゴン原子がイオン化してプラズマが形成される。このプラズマは正電荷を帯びたアルゴンイオンで構成される。ボンバードメントとスパッタリング
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正電荷を帯びたアルゴンイオンは、電界によって負電荷を帯びたターゲット(カソード)に向かって加速される。衝突すると、これらのイオンはスパッタリングと呼ばれるプロセスによってターゲット材料から原子を離脱させる。これには、ターゲット原子に十分なエネルギーを与えて結合力に打ち勝たせ、表面から放出させることが含まれる。
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基板への蒸着:
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放出されたターゲット原子はチャンバー内を様々な方向に移動し、最終的に基板(陽極)上に堆積して薄膜を形成する。この蒸着プロセスは、金属コーティング、半導体製造、装飾仕上げなどの用途に極めて重要である。利点と限界
DCスパッタリングは、その簡便さと低コストのため、導電性材料の成膜に特に適している。制御が容易で、消費電力も比較的低い。しかし、非導電性材料や誘電性材料はスパッタプロセスを維持するのに必要な電子流を伝導しないため、成膜には有効ではない。さらに、アルゴンイオンの密度が不十分な場合、成膜速度が低くなることがある。
応用例